戸井研究室助教 Cho, Wan-Ho先生

精密機械工学科に2010年4月に赴任された,助教のCho, Wan-Ho先生を紹介します.

「経歴」

‐中央大学理工学部精密機械工学科助教 (2010/04/01-)

‐Part-time lecturer in the Department of Aerodynamic, Chungnam National University (2009/03-2009/06)

‐Post doctor in the School of Mechanical, Aerospace & System Engineering, KAIST, Korea (2008/09-2010/02)

‐Korea Advanced Institute of Science and Technology,Mechanical Engineering博士課程修了(2008/08)

‐Internship student in the Lab. of Acoustical Imaging and Sound Control, Faculty of Applied Sciences, Delft University of Tech., The Netherlands (2006/11-2007/05)

‐Korea Advanced Institute of Science and Technology,Mechanical Engineering修士課程修了(2004/02)

‐Korea Advanced Institute of Science and Technology,Mechanical Engineering卒業 (2002/02)

‐Young-Deung-Po High School卒業 (1998/02)

私は韓国出身であり,今年の3月から日本での生活を始めました.以前は韓国のKAISTという工科大学で学部から修士,博士,ポスドクまでの12年を過ごしましたので(間に半年のオランダ生活も入ってますが),今が人生の大きい転換期でもあります.自分が昔から研究しているのは‘音’に対してです.詳しくは望ましい形の音を作り出す方法を研究しています.事実,これは趣味の一つでもあり,いい音を出す装備や環境に興味を持っています.これは趣味欄でよく出てくる‘音楽鑑賞’とは少し距離があり,(もちろん音楽も好きで良く聴きますが),良い曲より 良い音そのものへちょっと傾いていて,良いオーディオや公演場などで音を聴くのが好きです.

「研究について」

音場制御とは一般的にオーディオのような能動的に音を出す装備を用いて,望ましい音が聞こえるようにする様々な工夫を言います.広い意味では音源だけではなく,反射や残響に関わる環境を設計するのも音場制御の作法に含まれます.音場制御と言ってもその中に色んなものがありますが,大きくは周波数応答(もしくは時間応答)制御と空間制御の二つに分けることが出来ます.周波数応答制御は分かり安く言うと,音質の制御です.例えば図1にある二つの波形を同じトラムの音ですが,残響を大きくするか少なくするかによって波形も変わり,聞こえる音の印象も大きく変わります.このように時間軸で響きを入れたり,ある周波数代域の大きさを調節するによって,聞こえる音の音質を制御することができます.

図1  周波数応答(時間応答)制御:(上)残響が少ない音,(下)残響が多い音

音の空間的制御とは音の流れや分布を制御することであり,自分が主に研究して来た分野でもあります.音は波動であり,その重ね合いによって音の流れや分布が変わります.なので,多数の音源を用いて,その音源から出る音の大きさや波面の位相を制御すれば,多様な形の音場を作るのが可能です.例えば,図2のように二つの音源が同じ位置に置かれていても,その位相によって全く違う音場が得られます.その位相差を上手く調節すれば図3のように波面が流れる方向を変えることも可能です.

図2 位相差による音場の変化:(左)同位相の音源,(右)逆位相の音源

図3 位相制御による方向制御

皆さんにもお馴染みである‘ステレオ’は音源間の大きさの比率を調節するによって音が流れてくる方向を再現する方法です(図4).近年,DVDやBlue-rayなどで標準として採用されている5.1,7.1チャンネルもこのステレオの理論を元で音源を増やしたものと理解すれば良いです.過去には音源の数を増やすのが難しいかったため,色んな音場制御方法が開発されてもなかなか実用化には結びつかなかったですが,最近はハードウェアの発達により値段も下がり,実用化に向けての試みも活発になっています.例えは,NHKでは次世代放送標準に投入する目的で22.2チャンネルのシステムを提案しており(http://www.nhk.or.jp/strl/vision/jp/r1-3-1.html),100チャンネル以上のシステムも実現されています(図5).

図4 ステレオの原理

図5 2008年Audio Engineering Society Conventionで展示されたWave Field Synthesis

(Berkhout, J. Audio Eng. Soc., 1988)システム

自分の研究は逆問題的接近を利用した音響要素の設計です.簡単にゆうと望む形の音場が与えられた場合,音に影響を与える色んな物の特性を決める方法です.逆問題的接近というのは結果から原因を求める方法をいいます.物理的な考えでは全ては原因(条件と入力)があってそれによって結果が現れるものであり,物理現象を表現する運動方程式などもそんな流れで作られます.しかし,何かを作る時は望む結果があって,それを得る為の何かを設計することになります.その場合,一番ダイレクトな方法は,原因になる要素と結果の間の関係を導き,それの逆をとって望む結果を掛けるにより,原因になる要素の条件を導く方法です.しかし,その時には実際適用可能な解を求めるために,色んな工夫が必要であります.そのような方法を音響問題に適用して色んな複雑な音場を作り上げるのが自分の研究内容です.図6はその例題として,一つの空間の中で一部にはとが流れ,その隣は静かな状況を維持する物を行った結果です.

音を出すのは非常に簡単ですが,良い音を出す,というのは奥が深いものです.良い音を感想する環境を揃えるためにも,オーディオシステムだけでは無く,それを良く響かせる空間,周りに迷惑にならないようにする施設など様々なものが必要です.いつかは自分が学んで研究して来たことの全てを生かしたリスニングルームを立てることを夢見ながら研究を続けています.

図6 逆問題的接近を利用した音響要素の設計の例題

「学生さんに一言」

‘諦めなければ夢は叶える’とか世間では簡単に言いますが,正直,現実はそんなに甘くはありません.でも頑張れば,形は違えども近づいた何かを得ることは可能です.人生の成敗は何をやるかではなく,どうやるかによって決まると思います.それなら,自分が頑張る気になれる方に進むのは如何でしょうか.

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