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学部3年生を対象とした精密機械実験の講義では、皆さんに各研究室で実験を行ってもらい、その結果、考察をレポートにまとめて提出してもらいます。ただ聴いているだけの講義とは違い、まさに4年生での卒業研究の準備運動という位置づけになるでしょう。また、実験内容は各研究室の特色が現れているものが多く、今後の研究室選びにも大いに参考になると思います。今回は数ある実験の中でも井上研究室担当の
スナップフィットファスナーの機械的特性値計測とモデル計算
についてご紹介します。
≪スナップフィットファスナーとは?≫
皆さんは「スナップフィットファスナー」って知っていますか?何だか長い名前ですが皆さん絶対に見たことがあるはずです。
正解はこれ↓
分解状態 組立状態
この様な締結具のことをスナップフィットファスナーと言います。バックの留め具やリモコンの電池カバーなど日常のいたる所で目にしますが、名前を知っている人は少ないのではないでしょうか?
種類も様々なものがあります。
今回の実験で用いるタイプ U字タイプ
スナップフィットファスナー機構は、主にプラスチック材の締結の際に用いられる締結機構で、プラスチックの弾性変形を利用した締結機構です。皆さんも経験があると思いますが、スナップフィットファスナーは組立・分解が非常に簡単に行えます。そのため製品の組立性・分解性の向上に大きく貢献できる締結機構です。組立て作業の単純化は生産性の向上につながります。また特に近年では、環境への配慮から廃製品のリサイクル・リユースを積極的に進めていかなくてはなりません。そんなとき、製品の分解性を向上できるスナップフィットファスナー機構は、廃製品の解体を容易にし、リサイクルコストの削減を可能にします!!まさに縁の下の力持ちです。
≪実験の概要≫
スナップフィットファスナーを実際の製品設計に取り入れるには、その締結力の正確な予測が必要不可欠です。本実験では、スナップフィットファスナーを材料力学の「片持ちはり」のモデルとして考え、組立力・分解力の理論式を構築しています。
実験で使うスナップフィットファスナー はりのモデル
それらの理論式の計算結果と実験で測定した結果の比較考察が本実験の主な目的です。
皆さんが大学の講義で習う材料力学も、その知識が実際にどのように生かされるのかがわからなければ単なる数学でしかありません。しかし、この実験を行うことで皆さんの知識が確かに製品設計の場で応用されていることが実感してもらえると思います!!
≪実験内容≫
実験ではビーム長さの異なる3種類のスナップフィットファスナーを用いて以下の3種類の実験を行います。材質はABS(アクリロニトリル・ブタジレン・スチレン)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリアセタール)の3種類です。
①組立力・分解力の実測実験
スナップフィットファスナーを台座に対して押し込む時の力(組立力)と引き抜く時の力(分解力)の最大値と、その時に生じる変形量を計測します。
実測値と理論値にはどの様な違いが出るでしょうか??
装置の外観
②剛性の測定実験
ここではスナップフィットの剛性を測定します。剛性とは材料の「変形しにくさ」を表し、材料に与える力と変形量の比で求めることができます。ここでは、スナップフィットを下から押し上げて変形させ、その時の変形量とそれに必要な力を計測し剛性を求めます。
ビーム長さの違いは剛性にどの様な影響を与えるでしょうか??
実測値と理論値にはどの様な違いが出るでしょうか??
装置の外観 押し上げられるスナップフィット
③摩擦係数の実測実験
スナップフィットファスナーは組立・分解の際に台座から摩擦力を受けます。ここでは、理論値計算に必要な摩擦係数を実測していきます。摩擦係数は摩擦力と垂直荷重の比で表わされ、重りを乗せることで垂直荷重を与え、下の板を左右にスライドさせたときの摩擦力を測定します。
垂直荷重の変化が摩擦係数に与える影響は??
装置の外観 板と試験片の摩擦力の測定
以上の3種類の実験を行ってもらいます。実験のボリュームがかなり多いので効率よく実験を行うことも求められます。わからないことはTAに聞きましょう!!
≪講義風景≫
講義風景はこんな感じです。
最初に先生によるイントロダクションがあります。
レポート作成へのヒントがあるので寝ないように!!
実験開始!!
皆で役割分担して、うまく連携をとることが実験を素早く終える秘訣!?
ハンドメイド感バツグンの実験装置は井上研のメンバーが自作したものです!!
パソコンがやや古いですが来年からは新しいパソコンを導入予定です。乞うご期待!!
レポート提出時には先生の厳しいチェックが入ります!!
他人のレポートの丸写しは通用しないのだ\(^0^)/
実験の講義では「予習」、「実験」、「レポートの作成」の3つがセットで成り立っています。予習をしておかないと、何をしているのかわからないまま講義が終わってしまいますよ!!教科書を読んで内容を把握してから実験に臨めるようにしましょう。またレポート作成では、実験結果を十分に考察することが求められ、それらを分かりやすくまとめる工夫(どんなグラフを描くと効果的!?などなど…)が必要となります。4年生の卒業研究の予行練習だと思って取り組んでみてください。
以上が精密機械実験「スナップフィットファスナーの機械的特性値計測とモデル計算」の講義紹介です。スナップフィットファスナーは井上研(生産環境工学研究室)の主要研究テーマの一つでもあるので、興味を持った方はぜひ2310室の井上研に遊びに来てください!!