材料強度学研究室(米津研)  研究室紹介

2012年度に着任された米津先生を紹介します.

【経歴】

青山学院大学理工学部機械 工学科卒業(1999年)

青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了(2001年)

キヤノン 株式会社勤務(2001~ 2003年)

青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了(2006年)

青山学院大学21 世紀COE プログラム研究支援者(PD)(2006年4 ~ 12 月)

大阪大学 大学院工学研究科機械工学専攻助教(2007 ~ 2012年)

中央大学理工学部准教授(2012年~)。

日本材料学会論文賞、日本非破壊検査協会論文賞、創立 60 周年記念優秀論文賞 他多数受賞経歴あり。

【研究分野】

未知の領域が広がるナノスケールの微細な 材料の世界で、変形し破壊される法則性を見出し 予測することで、安全・安心な社会に貢献していく

形あるものは全て壊れる。よく使われる言い回しですが、米津先生の専門分野は、正にこの言葉を前提としています。「材料強 度学」とは、どんな負荷条件で材料が変形し破壊に至るか、その限界を推定し、予測する研究領域です。その対象となるのは、 旅客機やエネルギープラントなどの大きなものから、携帯電話などに使われるナノスケールの材料まで多岐にわたります。しか し、「全て壊れる」といっても、私たちはその事実を忘れてしまいがちです。材料強度学は、だからこそ人間社会の安全を維持 するためになくてはならない存在なのです。米津先生の言葉からは、その目的を成し遂げるための強い意志が伝わってきます。

大型インフラの強度予測も 安全を目指す志は同じ

いまは寸法がマイクロメートルやナノメートルという微小材料の研究 がその中心になっている米津先生ですが、研究者としてのスタートライ ンは、石油や天然ガスなどを扱うパイプラインや貯蔵タンクなどの大 型インフラが対象でした。経年的な劣化や損傷が許されないこの種 の設備を、壊れる前に未然に察知するためにモニタリングするセンサー やシステムを研究していました。何百m という配管の要所、要所に 超音波センサーを付け、常時、損傷発生による微弱な超音波の信号 をチェックしながら状態を監視して危険を予測する「非破壊検査」と 呼ばれる手法です。現在のマイクロやナノレベルにおける材料強度学 とはもちろん手法は大きく違いますが、安全や信頼を目指すという目 標は共通しています。先生は、こう語ります。「特にこの分野だけに特化する、という思いはありません。材料 は世の中の実に多様な場面で使われていますし、どんな分野でも必 要とされる研究者でありたいと思っています」 ただし、この最初の研究によって材料の劣化や損傷の本質に興 味をもち、その防止策の一つである表面改質法に関する研究へ次第 にシフトしました。つまり、劣化してしまう材料でも頑丈な膜(薄膜や コーティング材料)を付与してあげれば、長持ちする場合があります。 しかしながら、このような薄膜材料の厚さはマイクロメートル以下であ り、髪の毛の太さよりとても小さくなるので、実験が格段に難しくなり ます。

髪の毛の100分の1以下の世界で 生まれる新たなる実験のテーマ

さて、マイクロやナノスケールの強度学では、これまで留意しなくて よかった様々な要素が加わります。 「対象が小さくなると、体積に対して表面の割合が格段に大きくな るので、従来は無視できていた表面の効果を考慮する必要が出てき ます。また、これまで単に均質な固体として扱ってきたものでも、原 子の集まりである結晶の個性が主張し始め均質体ではなくなる点、さ らには、わずかな原子層の乱れがその材料自身の致命傷になりうる、 という違いも生まれてきます。現在の材料強度学の世界は、髪の毛 の太さの100 分の1くらいの1μm(マイクロメートル)以下の水準にま で扱う対象が広がっています。しかし、こうした研究内容の変化も、 ここ20 年のナノテクノロジーの進歩による分析装置の開発など技術 革新から生まれたと言っていいかもしれません」 どんな力が加わっても、この材料はここまで変形や破壊に耐えられる。それを予測できる法則を、実験と計算の両方を組み合わせて 新規な理論を見出していく「材料強度学」。だからこそ、ナノスケール のような微小で新たな材料を対象にする場合には、その実験方法を 考えるのが一番のテーマになります。なぜなら、最も一般的な実験 方法である“材料を引っ張る”という方法が、サイズが小さくなると 不可能になるからです。そのため米津先生の研究室では、ときに実 験装置そのものを開発することもあるのです。

アイデアあふれるアプローチで 「変形」と破壊の予測に挑戦

それではいま、材料強度学の実験の世界はどのように展開してい るのでしょうか。研究室における事例を、米津先生に紹介いただきま しょう。 「下の左側の図の円錐形の部分は、ダイヤモンド製で『圧子』と 呼ばれます。その下の材料に押し付けて、そのときの押し付けた力と 変位の関係である接触の力学的応答から正確に強度を予測できま す。右側の図は、異方性といって左右と上下にそれぞれ引っ張った 場合に変形特性が違う、塑性加工された材料の実験事例です。こ のような変形異方性は、薄膜や複合材料でもよく見られますが、対 象寸法が微小になると引っ張ることができないので、中央部に圧子 を打ち込んだ際の応答により、計算上で変形特性を予測します。つ まり、これまで2 方向に引っ張っていた実験を1 回の『接触』で終 わらせるアイデアが生かされています」

ナノスケールから 壊れにくい材料開発にも挑戦

米津先生が取り組むもう一つのアプローチは、壊れにくい材料開 発の領域です。 「材料の寸法をナノスケールまで縮小すると、変形せずにすぐ壊 れてしまう性質を示し、これを『寸法効果』といっています。これ がマイクロマシンなどの微小機械の開発や製造を難しくさせていま す。そこで、1μ m 以下の薄い膜を波状にしてコーティングすること で、すぐに破断していた材料を、伸び縮みするしなやかな性質に変 化させるというアイデアを思いつき、開発に成功しました。この成功 は、これまで培ってきた材料強度学や材料科学の蓄積によるもので す。つまり、材料を創製する「材料科学」に、変形や破壊の法則を 議論する「材料強度学」をうまく組み込み、新たな機能を付与するナノ材料の開発を実現しました。また、最近では水処理膜というナノ サイズの孔が無数にあいている膜濾過材料の共同研究もスタートして います。持続可能な水資源を確保する濾過機能を発現するには、ナ ノ孔のサイズや配列が鍵となりますが、これらは材料全体の強度や 寿命に大きく影響を及ぼします。そのため、ナノ孔の最適化、つまり 濾過機能と強度のバランスの検討も我々のナノ材料強度学の使命で す。今後もこうしたナノスケールにおける材料の力学的な設計に挑戦し、 今までに実現されていない新たな機能創製を模索していく予定です」 米津先生が手がけるナノスケールの材料強度の分野はまだ普遍的 な法則性が確立されておらず、分子レベルの大きさのナノマシン開発 などの需要が見込まれるなかで、その研究成果に大きな期待が寄せ られています。 「材料や技術を開発されている方々とのコラボレーションは、もち ろん重要だと考えています。応力を低減させる力学設計や材料の組 成を変えることで壊れにくくする方法の提案など、研究を通して様々 な分野に貢献できることは数多くあります。」実際に電機、自動車、 材料関連のメーカーやエネルギープラントなど様々な企業との共同研 究プロジェクトにも参画しています。「ただ、その一方で、材料強度と いう純粋なサイエンスの面白さにもひかれています。ものが壊れたり、 何かが起こったときに、そのメカニズムを探究し解明する過程に醍醐 味があります。まさに、複雑で難解な現象の本質や真相を明らかに するような気分になります」 安心・安全な社会になくてはならない材料強度学の世界。そのな かで、発想力豊かな米津先生の研究との出合いが、サイエンスの真 のよろこびをもたらしてくれるはずです。

Message ~受験生に向けて~

よい成績をすぐに得られるような短期集中の勉強法 ではなく、高校では十分な時間を使って基礎をしっかり 学び、大学でも焦らずそれぞれの分野の基礎を学んで ください。技術革新が目覚ましい現在、社会に出ると 様々な分野を横断しなくてはいけないかもしれませんが、 基礎力がある人は、いかなる問題にぶつかっても必ず 解決できると思います。

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